10月 ドコモ(docomo)はどこへ?

2012年11月16日ドコモ(docomo) は、自社の優位性をアピールするため,クロッシィ、LTEに関する説明会を開いた。同日から全国10都市で受信最大100Mビット/秒のサービスを始めたほか、来春には受信最大112.5Mビット/秒に高速化する計画。LTE対応の超小型基地局(フェムトセル)も開発し、国内最強の通信エリアカバレージに加え、さらにダークゾーンと呼ばれる、公共不通話ゾーン、住居や店舗、オフィスなどに設置してエリア拡充と品質強化に努めていく。説明会では、高速ハンドオーバー機能や基地局と交換機の多重接続、スループット向上の取り組みなどを紹介、受信最大3Gビット/秒を実現するLTE-Advancedの導入を3年後の2015年とした。

これに先立ち7月22日の決算会見で、代表取締役加藤薫氏はLTE早期対応について次のように語っていた。「先行的なメリットは、まだ薄れるものではない。容量、スループット、つながりやすさは基地局をどう配置し、どうチューニングするか。基地局増設において、トータルでどのくらいのチューンナップをしていくのかが、事業者の能力。この優位性を保持していく」。一連の動きはドコモ(docomo)の通信速度や品質に対する継続的な姿勢を表している。
実際、通話や通信の品質では問題を起こしながらもドコモ(docomo) は競合他社に比べ安心して使用出来る、特にビジネスシーンでは、どこでもまさに、まともに繋がらなければ話にならない、ドコモ(docomo)へ の信頼度は高い。
11月17日ドコモ(docomo) は大々的に新聞の全面広告を打った。メッセージは2つ、「つながる、つかえる、LTE」 と「国内最速LTEスマホ」である。

さて、ドコモ(docomo)が何故このタイミングで通話や通信についてプレスアナウンスを行い、新聞に全面広告を打ったのであろうか?
ドコモ(docomo) は去る10月26日、2013年3月期の営業利益見通しを9000億から8200億へと下方修正、7年ぶりの営業減益を発表した。この下方修正は9月に発売となった好調なi-Phone 5 を持つau とソフトバンク(SB)への対抗策として販売促進費の大幅な積み増しの結果である。契約数の純増は維持しているが、MNP による、auやSBへの顧客流失が深刻化、ドコモ(docomo)の下方修正は、これに対抗してスマホの拡販を進めるために800億円以上の費用を競合対策として積み増すのが要因である。ここで当然の疑問として持ち上がるのは、i-Phone 5の対抗策としてドコモ(docomo)の「つながる、つかえる、LTE」 と「国内最速LTEスマホ」は本当に利用者獲得対策となりうるのか?

ドコモ(docomo)の基本スタンスではi-Phone 5の販売は見送られている。社団法人電気通信事業者協会 (TCA)の10月末までの統計資料を見ると、ドコモ(docomo) は9月末から10月末の一月での契約純増数は7200,これに対してauは238,000, SBは284,000。ドコモ(docomo)はauとSBに各々200,000の水を明けられたのである。9月、10月の二月では約20万のドコモ(docomo)ユーザーがau, SBに流失したと考えられる。この三社が扱うアンドロイドスマホ本体では大差無く、むしろドコモ(docomo)は通話、通信の品質やネットワークサービスにおいて一日の利がある。この意味する事は20万ドコモ(docomo)ユーザーがi-Phone 5を提供するau, SBに流れたのである。
それでは何故、それだけ多くのドコモ(docomo)ユーザーがi-Phone 5に鞍替えしたのであろうか。 スペックを見るかぎり、特に日本のアンドロイドスマホはi-Phone 5には無い機能、ワンセグ、お財布、赤外線、SDメモリー、防水、Flash対応、バッテリー交換可、HDMI出力が可能であり魅力的に見える。ドコモ(docomo)は素晴らしいハードや使用環境を提供するが、それでは、i-Phone5へ流失する状況を止めるには何が足りないのであろうか。
i-Phone愛好者が口にする「何故i-Phoneを使うのか」との問いの答えとして出てくる理由は次の様な表現に集約される。すなわち、i-Phoneは直観的で使いやすく、端末のレスポンスがいい、旧型機でOSが更新されてさほど重くならないし、システムが安定している。電池の持ちが良く、信頼できるアプリが揃っており、音楽配信も充実、スマホのあるべき姿とあるべき機能が揃っている。実はこんな口コミがアップルフリークと呼ばれるブランド信仰者により新たなユーザーを引き込んでいる。アップルが得意とする、一歩先行く商品提供とそれをブランド化するイメージ構築。現在の市場はこの図式の上でダイナミックに動いている。
アップルとアンドロイドスマホ、2つのGUIをいじってみると、よく言われることであるが、「使う」と言う感覚において確かに短い時間でアップルのGUIは使う事ができる様になる。ここで大切なのは全ての機能が使えるようになるかと言えばそうでは無く、スマホを使い始めて日常必要とするような機能において、直感的に使いやすいと言うことである。直感的使いやすさは大切であるが、それ故、エンドユーザーはアップルを選び続けるかと言うとそうでもない。i-Phoneが選ばれるその他の理由についても今の時点で、「まーそうかも知れませんが、アンドロイドスマホも急速に追いついている」が現状であろう。
過去のPCの歴史を見るとアップルが市場を切り開きマイクロソフトが刈り取りをおこなった。現状、リードを持つアップルに対してアンドロイドも将来の展開においては同じような道を進むであろう。慣れてしまえばアップルのOSであろうがMS Windows/ アンドロイドで有ろうが大して変わらない。ドコモ(docomo)はマイクロソフトがどの様にアップルの切りくずして行ったか、今一度、過去から学ぶことも有用であろう。乗り換えのユーザーを引き止めるのが大切なら、乗り換えそうなユーザーに対して、今より、実利的で明確なメッセージを送る事にもっと注力した方が得策ではないか。